Google先生の活用方法

本日は5月19日のNewyorkタイムズに書かれていたDaniel T.Willingham氏の記事をシェアさせていただきます。

皆さんは学校で「川の名前」や「ピタゴラスの定義」を覚えさせられたときに、「これが一体何の役に立つのか?」と不思議に思ったはずです。一方、最近の子供たちは、物事をはっきりと言います。Googleの教育アプリグループのディレクターであるJonathan Rochelle氏は、昨年の業界カンファレンスで、二次方程式を学ぶ必要がある理由を子供たちに聞かれたときに、「答えることができなかった」そうです。

子どもたちからの「Google先生に聞けばいいんじゃないの?」に正しく反論できなかったのです。


それでも脳は必要

By DANIEL T. WILLINGHAM MAY 19, 2017 https://www.nytimes.com/2017/05/19/opinion/sunday/you-still-need-your-brain.html


私は「Google先生だけではだめな理由を」説明できます。

Googleは情報をみつけることが得意ですが、脳は主に2つの点でGoogleに勝っています。Googleを擁護する人たちは、言葉や文章の意味がコンテキストによってどれほど大きく変化するかを甘く見ています。たとえば、語彙について考えてみましょう。教師であれば、類義語辞典を使ったために、言葉の使い方があまり正確ではない作文を見たことがあるはずです。子供は、「綿密な(meticulous)」という言葉を調べてそれが「非常に注意深い」という意味だと分かると、「私は崖から下りるときに、“meticulous”だった」と書いてしまいます。

正しい知識を記憶していれば、脳は言葉をコンテキストに正しく関連付けることができます。たとえば、「Trishaがコーヒーをこぼした」という文の後に、「Danが即座に雑巾を取りに行った」という文があれば、脳は、「こぼす」という言葉の意味する「汚す」という側面に直ちに注目します。もしこれが、「Danが即座にコーヒーを取りに行った」であれば、「こぼす」ことによって、Trishaに何かが不足する状態になったことが強調されます。さらに、「Danは飛び上がり、苦痛のあまり叫んだ」であれば、また別の意味になるでしょう。

「こぼす」の意味はコンテキストによって異なりますが、辞書(インターネットの辞書も含む)では、コンテキストに関係のない意味しか得ることができません。だから、子供たちは、崖から「meticulouslyに」下りてしまうのです。

これからのインターネット検索では、コンテキストも考慮されるようになるでしょう。しかし、人間の脳がシリコンチップと直接やり取りできるようになるまでは、スピードという別の問題が残ります。

すばやくアクセスできることが、インターネットを使う大きな利点だと考えられています。二次方程式を覚えなくても、いつでもそれを調べることができます。それでも、本の正しいページを見つける場合ほど時間はかからないにしろ、ブラウザーを開いて調べるには少し時間がかかります。これは脳の動作よりもはるかに多くの時間です。

二次方程式が、より大きな問題の一部である場合には、スピードがさらに重要となります。掛け算表を覚えていないときに、397,394 x 9 を計算する場合を考えてみてください。4 x 9の答えを調べることはできますが、このような方法ではすぐにわけが分からなくなってしまいます。だからこそ、National Mathematics Advisory Panelは、「迅速かつ努力なしに事実を思い出せること」を数学教育の必須事項の1つとして挙げているのです 読解の場合もスピードが重要です。研究によると、快適に読むには、最低でもテキスト中の95パーセントの単語を知っている必要があります。いちいち言葉の定義を調べていたのでは集中できません。オンラインの場合、ハイパーリンクがあると、それをクリックするかどうかを考えることによって理解の流れが妨げられるので、読解が損なわれます。

言葉の深い意味を知っていることも役に立ちます。

実際には、脳の中では、単語の意味、スペル、発音が別々になっています。特定の単語を思い出すことができても、他の単語は思い出せないことがあるのはそのためです。たとえば、「お金を借りている人」と言いたいときに、「債務者(debtor)」という言葉を思い出すことができない場合などがあります。よい読み手の脳では、スペル、音、意味が確実かつ迅速に関連付けられています。スピードがあれば、他の重要なこと(たとえば、フレーズの意味を解釈する)を行って先に進むことができます。

頭の中にある知識は自動的に使われますが、インターネットから得た知識を使う場合、そうはいきません。

記憶から情報を想起するたびに、次回には少し思い出しやすくなります。だからこそ、よくあるように、テストの前にテキストやノートをただ読み返すよりも、自分で自分にクイズをした方が、テストのときによく思い出すことができるのです。読み返せば、正しい知識に触れることはできますが、それを覚えることはできません。同様に、いつもGPSを使っていたのでは道を覚えることができませんが、前に通った道を自分で思い出そうとすれば、次第に覚えることができます。

脳は、コンテキストやスピードに関してはインターネットより優れていますが、量に関してはインターネットにかないません。インターネットではどのような情報でも見つけることができます。これに対し、脳にある情報は限られています。では、学ぶべきことをどのように選んだらいいでしょう?

インターネットで補うことが難しい情報は覚える必要があります。

インターネットから情報を得るには時間がかかるので、迅速かつ頻繁に必要とされる情報は覚える必要があります。初歩的な算数や文字の音を覚える必要があるのは当然ですが、頻繁に必要とされる情報も覚える候補となります。代数の場合、二次方程式がこれに相当します。

インターネットは、情報をコンテキストに関連付けることが得意ではありません。

二次方程式を調べて済まそうとする子供は、「meticulous」を正しく使えない子供と同様です。定義を知っていても、それを正しく使うための背景知識がないのです。式を覚えるだけでなく、その仕組みや、数学の他のトピックとの関連性を学ぶ必要があります。脳では、コンテキスト情報がこのようにして形成されていきます。だから、語彙を学ぶときに、単に定義を覚えるだけのインストラクションが行われることはめったにありません。学ぼうとする言葉をさまざまな文章で使ってみる必要があります。より高度な概念についても同じことが言えます。

人の記憶をGoogleに置き換えることができるという考え方は、憂慮すべき誤りです。しかし、人の脳とGoogleそれぞれが得意とするところを意識すれば、Googleを活用して人の記憶を補うことができます。



いかがでしたでしょうか?インターネットテクノロジーの発達によって「調べ物」は本当に簡単に出来るようになりました。ただ、今のところその「調べ物」をコンテキストに関連付けることが出来るのは脳にしか出来ず、かつ、そのスピードはインターネットや検索のスピードを遥かに上回っているのです。

このことが皆さんの学習の参考になれば幸いです。